[コラム]日本政府、衣類廃棄削減へ行動計画を検討 深刻化するファッションロス問題とは
2026.03.17
日本政府が衣類廃棄削減の行動計画を検討 ファッションロス問題と日本の衣類ごみの現状
日本政府が、家庭から排出される衣類ごみの削減に向けた具体的な対策を検討している。背景には、日本国内で大量に発生している衣類廃棄、いわゆる「ファッションロス」の問題がある。環境省は繊維製品の資源循環を進めるため、関係省庁や業界団体とともに対策を議論しており、衣類のリユース・リサイクル促進や回収体制の整備などを柱とする行動計画の検討が進められている。
衣類は生活に欠かせない製品である一方、近年はファストファッションの普及などにより消費量が増え、着用期間の短期化が指摘されている。購入された衣類の多くが十分に使われないまま廃棄される状況は、資源の浪費だけでなく環境負荷の観点からも問題視されている。こうした背景から、日本でも衣類廃棄の削減を目指す政策の検討が進められている。
日本で発生する衣類廃棄の量
環境省の調査によると、日本では家庭から手放される衣類は年間で数十万トン規模にのぼる。推計によって数値には差があるものの、家庭から排出される衣類の多くが可燃ごみとして処理され、焼却や埋立てに回っているとされる。環境省の白書では、家庭から排出される衣類のうち相当量が焼却処理されており、資源として循環している割合は限定的であることが指摘されている。
衣類廃棄量の数値は、集計方法や対象範囲によって異なる。例えば、家庭から手放された衣類の量をベースに推計した場合と、自治体のごみとして処理された衣類量をベースにした場合では数値が変わる。このため、記事や報道で示される数値は出典によって差があるが、いずれの推計でも日本では大量の衣類が廃棄されているという点は共通している。
また、衣類の消費量自体も大きい。日本で販売される衣料品の多くは海外で生産されており、原材料の調達から製造、輸送、販売、廃棄までを含めたライフサイクル全体で見ると環境負荷が大きいとされている。衣類廃棄の問題は、単にごみ処理の問題にとどまらず、資源利用や温室効果ガス排出とも関係する環境課題といえる。
政府が示した衣類廃棄削減の目標
衣類廃棄削減に関する政策の土台となっているのが、環境省が公表した「繊維製品における資源循環ロードマップ」である。このロードマップでは、2030年度を目標年として、家庭から廃棄される衣類量を2020年度比で25%削減する目標が掲げられている。
この目標を実現するためには、単に廃棄を減らすだけでなく、衣類の利用方法や回収の仕組みを見直す必要がある。そのため政府は、消費者、自治体、企業のそれぞれが関わる形での行動計画の検討を進めている。具体的には、使用済み衣類の回収体制の整備、リユース市場の拡大、繊維リサイクル技術の活用などが議論されている。
衣類回収とリユースの現状
日本では、自治体や小売店、リサイクル事業者による衣類回収の取り組みが進められている。自治体による資源回収や店頭回収、古着回収ボックスなどを通じて衣類を回収する仕組みが存在するが、回収体制には地域差がある。
環境省の資料では、行政による衣類回収を実施している地域の人口カバー率は全国で約65%とされている。つまり、多くの地域では何らかの形で衣類回収が行われているが、すべての地域で同じように利用しやすいわけではない。回収拠点の数やアクセスのしやすさ、分別ルールの違いなどにより、衣類が可燃ごみに出されてしまうケースも多いと考えられている。
一方で、フリマアプリや中古衣料店の普及により、個人間での衣類リユース市場も拡大している。不要になった衣類を売却したり譲渡したりする仕組みは、衣類廃棄を減らす有効な手段の一つとされている。
繊維リサイクルの課題
衣類の資源循環を進める上で課題となっているのが、繊維リサイクルの難しさである。衣類には綿やポリエステル、ナイロンなどさまざまな素材が使用されており、複数の素材が混合された製品も多い。このため、素材ごとに分離して再利用することが難しい場合がある。
また、リサイクルを行うためには回収された衣類を適切に選別する必要がある。状態の良い衣類はリユースとして再販売できるが、汚れや破損のある衣類は再資源化や燃料利用など別の処理方法が必要になる。こうした工程にはコストがかかるため、リサイクル事業の採算性が課題となることもある。
近年は、化学リサイクルなど新しい技術の研究も進められている。繊維を化学的に分解して原料に戻す技術が実用化されれば、衣類の資源循環が大きく進む可能性があると期待されている。
消費行動の変化も重要
衣類廃棄の削減には、回収やリサイクルだけでなく消費行動の見直しも重要とされている。環境省の調査では、家庭の中には長期間着用されていない衣類が多く存在すると指摘されている。衣類を購入しても十分に使用されないまま保管され、最終的に廃棄されるケースも少なくない。
衣類の利用期間を延ばすためには、長く着られる製品を選ぶことや、修理やメンテナンスを行いながら使用することも有効とされている。また、レンタルやシェアリングサービスの活用も、衣類の利用効率を高める方法の一つとして注目されている。
まとめ
日本では年間数十万トン規模の衣類が廃棄されており、その多くが焼却処理されているとされる。こうした状況を受け、政府は2030年度までに家庭から廃棄される衣類を25%削減する目標を掲げ、具体的な行動計画の検討を進めている。
衣類廃棄問題の解決には、回収体制の整備やリユース市場の拡大、繊維リサイクル技術の開発など多くの取り組みが必要になる。また、消費者の行動変化も重要な要素であり、衣類を長く使うことや再利用する仕組みを活用することが求められている。
衣類の資源循環を進めることは、廃棄物削減だけでなく、資源利用や環境負荷の低減にもつながる。政府が検討している行動計画が実行に移されれば、日本のファッション産業と消費行動にも変化をもたらす可能性がある。
