[コラム]気候変動適応計画の見直しとは?政府の最新動向と企業が取るべき対応
2026.02.24
2026年2月、政府は気候変動への適応政策の見直し議論を本格化させました。温室効果ガスの排出削減を進める「緩和策」に加え、すでに進行している気候変動の影響に備える「適応策」の重要性が、改めて政策レベルで確認されています。
2026年2月17日に開催された気候変動適応推進会議(第9回)では、同月16日に公表された「第3次気候変動影響評価報告書」を踏まえ、現行の気候変動適応計画の見直しを進める方針が示されました。政府は令和8年度中(2026年4月〜2027年3月)を目途に改定案の閣議決定を目指すとしています。
本記事では、計画見直しの背景、改定の方向性、そして企業に求められる対応について整理します。
気候変動適応とは何か
気候変動対策は大きく二つに分類されます。一つは温室効果ガスの排出を抑制する「緩和策」。もう一つが、既に現れている気候変動の影響に対応する「適応策」です。
日本では2018年に気候変動適応法が施行され、政府は気候変動適応計画を策定しました。適応策は、防災、農業、水資源、健康、産業活動など幅広い分野に関わる政策です。気候変動の影響が顕在化する中で、計画の実効性を高める必要性が高まっています。
なぜ今、見直しが必要なのか
極端気象の増加
気象庁の長期観測によれば、1時間降水量50ミリ以上の短時間強雨の発生回数は、統計期間(1976年以降)で増加傾向が確認されています。近年は線状降水帯による集中豪雨や記録的猛暑が頻発しており、従来想定を上回るリスクへの対応が課題となっています。
最新の科学的知見の反映
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告書では、気候変動による物理的リスクが今後さらに拡大する可能性が示されています。日本国内でも、都市部の暑熱リスク、農業収量への影響、インフラ被害の増加などが懸念されています。
2026年2月に公表された第3次気候変動影響評価報告書は、これらの最新知見を踏まえ、国内の分野別影響を整理したものです。今回の計画見直しは、この報告書を基礎資料として議論が進められています。
見直しの主な方向性
現時点では詳細な改定内容は確定していませんが、議論の方向性として以下の分野が重要視されています。
防災・減災対策の強化
河川整備や排水能力向上に加え、リスク情報の高度化や地域防災計画との連携強化が検討対象とされています。
農業・水産業への適応
高温耐性品種の導入、水産資源の変動への対応、水質管理の再検討など、一次産業への影響緩和策が議論されています。
健康分野への対応
猛暑による熱中症リスクの増加を踏まえ、地域単位での暑熱対策の強化が課題となっています。
地域適応計画の実効性向上
地方自治体が策定する地域適応計画の質の向上や、地域特性に応じた対策の具体化も重要な論点です。
企業に求められる対応
今回の政策見直しは、企業経営にも無関係ではありません。気候変動による物理的リスクは、事業継続やサプライチェーンに影響を及ぼす可能性があります。
物理的リスクの再評価
工場や物流拠点の浸水リスク、高温による設備負荷増大など、拠点別のリスク評価が重要です。
サプライチェーンの強靱化
特定地域への依存度が高い場合、気候リスクが事業継続に影響する可能性があります。調達先の分散化や代替手段の検討が求められます。
情報開示への対応
気候関連情報の開示は、投資家や金融機関、取引先の判断材料として参照される場面が増えています。従来のTCFD提言は、国際的なサステナビリティ開示基準(ISSB)へと発展的に整理されています。国内でもサステナビリティ開示基準の整備が進んでおり、気候関連情報への対応は実務上重要なテーマとなっています。
適応策は「守り」だけではない
適応策は被害軽減を目的とする側面が強いものの、事業継続力(レジリエンス)を高めることで企業価値向上につながる可能性があります。気候リスク管理体制の整備は、単なる環境対応ではなく、経営リスク管理の一環と位置付けることが重要です。
今後のスケジュール
政府は今後、関係省庁や有識者の議論を経て改定案を取りまとめ、令和8年度中(2026年4月〜2027年3月)の閣議決定を目指すとしています。改定内容の詳細が明らかになるにつれ、自治体や企業への影響も具体化していくと考えられます。
まとめ
2026年2月、政府は気候変動適応計画の見直し議論を開始しました。第3次気候変動影響評価報告書を基礎資料として検討が進行し、令和8年度中(2026年4月〜2027年3月)の改定を目指す方針です。企業にとっても、物理的リスク管理と情報開示への備えが重要になりつつあります。気候変動は将来の課題ではなく、現在進行形のリスクであるという前提で、最新の政策動向を踏まえた体制整備が求められます。
出典・参考
- 環境省「気候変動適応推進会議(第9回)の開催について」(2026年2月17日)
- 環境省「第3次気候変動影響評価報告書の公表について」(2026年2月16日)
- 気象庁「極端現象の変化(大雨・短時間強雨など)」
