[コラム]日本全国で拡大する外来植物「ナガエツルノゲイトウ」――農業と生態系に迫る新たな脅威
2026.01.20
日本各地の水路や農地で、外来植物「ナガエツルノゲイトウ(学名:Alternanthera philoxeroides)」の分布拡大が深刻な問題となっています。南米原産のこの植物は、繁殖力と環境適応力が非常に高く、農業への影響や生態系リスクが懸念されています。海外メディアでも日本での拡大状況が報じられ、改めて外来植物問題への関心が高まっています。
ナガエツルノゲイトウとは何か
ナガエツルノゲイトウはヒユ科の多年草で、水辺や湿地、用水路、田畑など幅広い環境に定着します。日本では1980年代後半に初めて確認され、その後、西日本から東日本へと分布を広げてきました。現在では複数の地域で定着が報告されており、特定外来生物に指定されています。
最大の特徴は、水中でも陸上でも生育できること、そして茎や葉の断片からでも容易に再生することです。このため、除去作業の際に細かくちぎれると、かえって拡散を招くリスクがあると指摘されています。
農業への影響――水田・用水路への侵入
農業分野では、特に水田や用水路での影響が懸念されています。
ナガエツルノゲイトウは水面を覆うように繁茂しやすく、用水路の流れを妨げたり、管理作業を困難にしたりする要因になります。また、水田周辺で繁殖すると、作物の生育環境に影響を及ぼす可能性もあります。
一度定着すると、草刈りや抜き取りだけでは根絶が難しく、継続的な管理コストが発生する点も農業現場にとって大きな負担となります。
生態系への影響――在来植物への圧力
ナガエツルノゲイトウは群落を形成しやすく、密生すると水面や地表を覆い尽くします。これにより、在来の水生植物や湿地植物が光を奪われ、生育環境が悪化するおそれがあります。
水域では、水の流れや酸素供給の状態が変化し、水生昆虫や魚類の生息環境に影響する可能性も指摘されています。外来植物の拡大は、単なる雑草問題にとどまらず、地域の生物多様性全体に関わる環境問題といえます。
なぜ拡大しているのか
専門家は、ナガエツルノゲイトウが日本の気候条件に適応しやすいことに加え、河川・用水路・農業施設・人の移動などを通じて、知らないうちに分布が広がっている可能性を指摘しています。
また、観賞用水草や研究用途などを通じた過去の持ち込みが、現在の定着につながったとみられています。現在では、生きた状態での栽培・運搬・譲渡などは法律で厳しく制限されています。
対策の現状と課題
ナガエツルノゲイトウ対策では、早期発見・早期対応が重要とされています。小規模なうちに専門機関と連携して除去を行うことで、拡大リスクを抑えられる可能性があるためです。
一方で、繁殖力が極めて強いため、完全な根絶は難しく、定着後は長期的な管理が必要になります。自治体や研究機関では、分布調査や防除技術の検討、住民向けの注意喚起などが進められています。
一般の人ができる対策としては、見慣れない水草を勝手に移動させないこと、河川や用水路で疑わしい植物を見かけた場合は自治体に情報提供することなどが、拡散防止につながります。
外来植物問題が示す日本の環境リスク
ナガエツルノゲイトウの拡大は、日本における外来種問題の象徴的な事例の一つです。物流や人の移動が活発化する現代では、外来生物が意図せず持ち込まれ、定着するリスクが常に存在します。
農業被害、生態系の変化、管理コストの増大など、影響は長期に及ぶ可能性があります。外来植物への対応は、地域の自然環境を守るだけでなく、将来的な環境負荷や経済的損失を抑えるための重要な取り組みといえるでしょう。
まとめ
外来植物「ナガエツルノゲイトウ」は、日本各地で分布を拡大しつつあり、農業と生態系の両面でリスクが指摘されています。繁殖力が非常に強く、定着後の対策は容易ではありません。
今後は、行政・研究機関・地域住民が連携し、早期発見と継続的な管理を進めることが重要になります。外来植物問題は、身近な水辺や農地から始まる環境課題として、より広い関心が求められています。
参考:Japan struggles to weed out plant threatening agriculture, ecosystems
