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[コラム]日本の原子力政策が転換点に|柏崎刈羽原発6号機の再稼働審議がスタート

2025.12.09

2025年12月、新潟県議会が柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に向けた審議を開始しました。柏崎刈羽原発は世界最大級の原子力発電所とされており、東京電力が福島第一原発事故以来、初めて再稼働を目指す原発として注目されています。

本記事では、最新の審議状況や国のエネルギー政策、地域住民の声などを整理し、日本の原子力政策における現在地をわかりやすく解説します。

柏崎刈羽原発6号機とは?

柏崎刈羽原子力発電所6号機は、次のような特徴を持つ原子炉です。

  • 所在地:新潟県柏崎市・刈羽村(日本海沿岸)
  • 運営主体:東京電力ホールディングス(TEPCO)
  • 出力:約1,356MWの大型原子炉
  • 現状:2011年の福島第一原発事故以降、長期停止が続いている

再稼働が実現すれば、日本全体の原子力政策にも大きな影響を与える「象徴的な一基」とみなされています。

新潟県議会は12月22日までに採決の見込み

2025年12月2日、新潟県議会はその年最後の定例会を開始し、6号機再稼働の是非が主要な議題の一つとなっています。

  • 審議期間:2025年12月2日〜12月22日(会期末)
  • 東京電力の計画:報道ベースでは、県議会の判断を前提に、2026年1月ごろの6号機再稼働を目指しているとされています
  • その他の基数:7号機の再稼働判断や、残る5基の廃炉検討も並行して検討されていると報じられています

採決日そのものは明言されていませんが、会期内の12月22日までに何らかの判断が示される可能性が高いとみられています。

なぜ今、再稼働なのか?日本のエネルギー事情

エネルギー安全保障と原子力の位置づけ

福島第一原発事故後、日本は原子力発電所を順次停止し、その穴を火力発電で補ってきました。その結果、直近でも日本の電力のおおよそ6〜7割前後を輸入化石燃料に依存する状況が続いています。

高市早苗首相は、エネルギー安全保障の観点から原発の再活用に前向きな姿勢を示しており、輸入燃料への依存度を抑えつつ安定的な電源を確保することの重要性を強調しています。

電力需要の増加とデータセンター・AIビジネス

近年、国内外の企業によるデータセンター投資やAI関連ビジネスの拡大により、日本の電力需要は再び増加に向かっていると指摘されています。省エネが進む一方で、常時稼働が必要なサーバー群や高負荷な計算処理の増加が、ベース電源の確保を課題としています。

経済産業省などの試算によると、柏崎刈羽原発6号機の単独再稼働だけでも、首都圏(東京エリア)の電力供給力をおよそ2%程度押し上げる効果が見込まれています。

東京電力の安全対策強化の取り組み

東京電力は過去の事故を教訓に、安全性の確保を最優先とする姿勢を示しています。報道によれば、防護服を着用した職員による訓練が行われるなど、現場レベルでの対応力向上も図られています。

また、東京電力の公表資料などによれば、次のような対策が進められているとされています。

  • 新規制基準に基づく安全対策設備・システムの整備
  • 地震・津波を想定した多重防護の強化
  • 非常用電源や冷却機能の冗長化・多様化

小早川智明社長は、経済団体に対する説明のなかで「資源の乏しい日本にとって原子力の活用は不可欠」と述べ、再稼働にあたって安全投資を継続していく考えを示しました。

一方で地元住民の不安は根強い

安全対策が進む一方で、地域住民の不安は簡単には解消されていません。柏崎市議会の星野幸彦議員は、次のような懸念を示しています。

「最も大きな心配は、事故時に本当に避難できるのかということだ。」

福島第一原発周辺では、いまも帰還できない住民がいる地域が残っています。その現実を踏まえると、再稼働の是非は単に設備の安全性だけでなく、避難計画や情報伝達体制、広域的な防災体制などを含めた「総合的な安全確保」が問われていると言えます。

日本全体の原子力政策はどう変わるのか

福島第一原発事故前、日本では54基の原子炉が稼働していました。現在は、そのうち33基が「稼働可能」とされ、その中で14基が再稼働しています。

世界的な脱炭素化の流れの中で、日本政府は従来「原発依存度の低減」を掲げてきましたが、近年はエネルギー安定供給と脱炭素の両立を図る中で、「安全性を前提とした原発の活用・最大限利用」を打ち出す場面が増えています。このため、専門家やメディアの間では、原子力政策の重心が変化しつつあると評価されています。

柏崎刈羽原発6号機の扱いは、今後の原子力政策の方向性を占う意味で、国内外からの注目度が非常に高い案件です。

東京電力と福島第一原発事故の賠償

東京電力は、福島第一原発事故に関する損害賠償の支払いを現在も続けています。避難生活の長期化や地域コミュニティへの影響は続いており、企業としての信頼回復には時間を要しています。

そのため、柏崎刈羽原発の再稼働に関しても、単に経済合理性だけではなく、被災地への責任や社会的な信頼の回復が重要な前提条件として問われています。

まとめ:12月22日の採決が日本のエネルギー政策を左右する可能性

柏崎刈羽原発6号機の再稼働審議は、次のような複数のテーマが交差する重要な局面となっています。

  • エネルギー安全保障の強化
  • 電力需給の逼迫と産業競争力
  • 地域住民の安全と避難体制
  • 福島第一原発事故からの教訓と信頼回復
  • 日本の原子力・脱炭素政策の今後の方向性

東京電力にとっては、福島第一原発事故以降の大きな転機であり、新潟県や全国の自治体、企業、市民が注視するテーマとなっています。

新潟県議会が会期末となる12月22日までにどのような判断を下すのか。その結果は、日本のエネルギー戦略や原子力政策全体に影響を与える可能性が高く、今後も継続的な情報収集と冷静な議論が求められます。

参考:A Japanese regional assembly is set to vote by December 22 on restarting nuclear plant

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