[コラム]日本の電気自動車販売シェア最新動向|2025年10月はEVシェア2.7%に回復
2025.11.25
世界的にEV(電気自動車)の普及が進むなか、日本国内では長く伸び悩みが続いてきました。とくに2024年は、それまで3年連続で拡大していたEVシェアが前年を下回り、一時的な減速が見られました。
一方、2025年に入ってからはホンダ「N-ONE e:」やトヨタ「bZ4X」など国内メーカーのBEVが本格投入され、直近の2025年10月時点ではEVシェアが2.7%まで回復しています。
本記事では、2025年10月の最新データをもとに、日本の電気自動車(EV)販売シェアの現状と、ここ数年の推移を整理して解説します。
1. EV・BEV・PHEV・HVの基本用語
まずは本記事で使用する用語の意味を整理します。
- BEV(Battery Electric Vehicle)
バッテリーに蓄えた電気のみで走行する、ガソリンエンジンを持たない「完全な電気自動車」です。 - PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)
外部から充電が可能なプラグインハイブリッド車です。エンジンとモーターを併用し、一定距離を電気だけで走行できます。 - EV(広義)
本記事では、BEVとPHEVを合わせた「外部充電が可能な電動車」をEVとして扱います。 - HV(ハイブリッド車)
いわゆるハイブリッド車です。日本では一般的に「HV」と呼ばれ、本記事でもEV(外部充電可能な車)とは区別して表記します。 - ZEV(Zero Emission Vehicle)
走行時にCO2などの排出ガスを出さない車の総称で、一般的にはBEVとFCV(燃料電池車)を含みます。
2. 2025年10月のEV販売台数とシェア
2-1. 乗用車全体の販売台数
2025年10月の日本国内における、軽自動車を含む乗用車全体の新車販売台数は次の通りです。
- 乗用車全体の販売台数:328,349台
- 2024年10月(337,677台)比:-2.76%
- 2019年10月(259,919台)比:+26.33%
直近1年ではわずかに減少しているものの、コロナ禍前の2019年と比べると、販売台数は約26%増えており、市場全体としては回復した水準が続いています。
2-2. EVシェアは2.70%に
同じく2025年10月のEV(BEV+PHEV)販売状況は以下の通りです。
- EV販売台数(BEV+PHEV):8,862台
- 乗用車全体に占めるEVシェア:2.70%
- 2024年10月のEVシェア:2.17%
前年同月比でシェアは0.53ポイント増加しており、2024年に一度低下した水準から、2025年に入って持ち直しつつあることが分かります。
EVの内訳は次の通りです。
- BEV:5,858台(シェア 1.78%)
- PHEV:3,004台(シェア 0.91%)
BEV・PHEVともに販売台数・シェアが前年同月から増加しており、日本のEV市場が再び拡大に向かい始めていることがデータから確認できます。
なお、自動車販売には「四半期の初めに減りやすく、四半期末や年度末に増えやすい」という季節性があるため、月単位の比較では前月ではなく、前年同月との比較がより重要です。
3. 燃料別の販売台数と電動車シェア
2025年10月の燃料別販売台数・シェア(乗用車全体に対する割合)は次の通りです。
- BEV:5,858台(1.78%)
- PHEV:3,004台(0.91%)
- EV合計(BEV+PHEV):8,862台(2.70%)
- FCV:42台(0.01%)
- ZEV合計(EV+FCV):8,904台(2.71%)
- HV:164,655台(50.15%)
- 電動車合計(ZEV+HV):173,559台(52.86%)
この数字から、次のような点が読み取れます。
- BEVとFCVを合わせたZEVのシェアは2.71%と、まだ少数派である。
- 一方で、HVを含む電動車全体では、乗用車販売の過半数(約53%)を占めている。
つまり、日本では「外部充電が必要なEV(BEV・PHEV)」の比率は現時点では高くないものの、HVを中心とした電動化そのものはかなり進んでいる状況です。
4. メーカー別に見る2025年10月のEV市場
4-1. 輸入車:BEV市場で高い存在感
2025年10月のEV販売台数のうち、輸入車の合計は3,150台でした。これにより、EV販売において輸入車が9か月連続で最多となっています。
内訳の一部では、輸入BEVが2,561台とされており、BEV市場において輸入ブランドが大きな割合を占めていることが分かります。また、乗用車全体における輸入車比率は8%台ですが、登録車のBEVに限ると、輸入車が多数派となっています。
輸入車側では、テスラやBYD、HyundaiなどEVに注力するメーカーがラインアップを増やしており、日本自動車輸入組合(JAIA)の統計でも、輸入車新規登録台数が前年を上回る状態が続いています。
4-2. 国産メーカー:トヨタ・ホンダ・日産・三菱の動向
国産メーカーのEV販売状況(BEV+PHEV)は、2025年10月時点で以下のように整理されています。
- トヨタ:2,743台
2024年10月の1,734台から約58%増となりました。「プリウス」「ハリアー」「RAV4」などのPHEVに加え、「bZ4X」やレクサスブランドのBEVが販売を押し上げています。 - ホンダ:1,141台
全数が新型軽EV「N-ONE e:」によるものです。「N-ONE e:」は2025年9月12日に発売され、発売直後からEV販売上位に入る台数となっています。 - 日産:905台
2024年10月の2,064台からは半減しており、「日産サクラ」「リーフ」「アリア」など既存EVの販売が前年同月より減少しました。 - 三菱:870台
2024年10月の823台から5.7%増となりました。「アウトランダーPHEV」「エクリプスクロスPHEV」「eKクロスEV」などのモデルが公表されています。
また、スズキは2026年1月16日に新型BEV「eビターラ」を発売すると発表しており、今後は国内メーカーによるBEVの選択肢がさらに増える見込みです。
5. 2018〜2025年のEV販売推移と現在地
5-1. 年別データ:2024年は一時的な減速局面
2018年以降の年別EV販売台数(BEV+PHEV)は、関連メディアの集計によると次のように整理されています。
- 2018年:49,790台(シェア 1.13%)
- 2019年:38,952台(シェア 0.91%)
- 2020年:29,345台(シェア 0.77%)
- 2021年:44,470台(シェア 1.21%)
- 2022年:96,585台(シェア 2.80%)
- 2023年:140,678台(シェア 3.52%)
- 2024年:102,868台(シェア 2.76%)
2021年から2023年にかけて、EV販売台数・シェアは一貫して拡大しましたが、2024年は台数ベースで約27%減少し、シェアも3.52%から2.76%へと低下しました。乗用車全体の販売台数も3,992,728台から3,725,198台へ減少しており、市場全体の縮小に加えて、EVの減少幅がやや大きくなっています。
5-2. 四半期・月次データから見る直近の動き
四半期別のデータを見ると、2025年はQ1・Q2・Q3の3期連続で、EV販売台数が前年同期を上回っています。
- 2024年Q3:EV販売 25,422台(シェア 2.60%)
- 2025年Q3:EV販売 26,690台(シェア 2.86%)
2024年に一度落ち込んだシェアは、2025年に入ってから徐々に回復しており、2023年の水準に近づきつつあることが四半期データから確認できます。
また、2025年10月までの月次データでも、7月・8月こそ前年同月比で減少したものの、1月・4月・5月・6月・9月・10月は前年同月を上回る結果となっており、2025年通年で見るとプラスに転じる可能性がデータ上示されています。
6. 日本のEV市場が抱える特徴と今後のポイント
ここまでのデータを踏まえると、2025年10月時点の日本におけるEV市場は次のように整理できます。
- 乗用車市場全体はコロナ禍前より回復した水準にある。
- BEV+PHEVを合計したEVシェアは2〜3%台で推移しており、2025年10月時点では2.7%となっている。
- HVを含む電動車全体では、販売台数の半数以上を占めており、「電動化」自体はかなり進展している。
- BEV市場では輸入車が大きなシェアを持つ一方で、2025年以降は国内メーカーのBEVも徐々に増えつつある。
本記事で紹介した数値は、一般社団法人 日本自動車販売協会連合会(JADA)の燃料別販売台数、公表されている軽自動車統計、日本自動車輸入組合(JAIA)の輸入車統計など、公開データに基づく集計結果から確認できるものに限定しています。
今後、国内メーカーによるEVラインナップの拡充や、充電インフラ整備、購入支援制度などの動きがどのように進むかによって、日本のEVシェアがどの程度まで伸びていくかが変わっていくと考えられます。
