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[コラム]海洋プラスチック問題の現在地と漁網リサイクル|意識調査から見える課題と可能性 世界的に海洋プラ

2025.11.18

世界的に海洋プラスチック問題が深刻化するなか、日本でも「漁具由来のプラスチックごみ」への関心が高まりつつあります。レジ袋やペットボトルなどの生活由来のごみだけでなく、漁網やロープなどの漁具も、海洋ごみの重要な要因として位置づけられています。

最近の調査では、使用済み漁網を回収して再生素材に変える「漁網リサイクル」に対する市民の関心や、海洋ごみの実態が具体的なデータとして示されています。本記事では、公開されている調査結果や情報に基づき、漁網由来の海洋プラスチック問題とリサイクルの動きを整理します。

1. 海洋プラスチックごみに占める漁具の位置づけ

日本の海岸で回収された漂着ごみの調査では、漁具がごみの中で大きな割合を占めることが報告されています。ある調査では、海岸で収集されたごみのうち、漁具が重量比・容積比・個数比のいずれにおいても高い割合を占めていたとされています。

このデータから分かるのは、海岸漂着ごみの中で漁網やロープなどの漁具が非常に大きな割合を占めているケースがあるということです。生活ごみだけでなく、漁具由来のプラスチックが海洋ごみ問題の重要な要素となっている点は、科学的な調査によって裏付けられています。

また、国際的には、海に流出した漁網やロープ、釣り糸などの漁具が「ゴーストギア」と呼ばれ、海洋生物への絡まりなどを通じて深刻な被害をもたらす問題として認識されています。

2. 漁網リサイクルに関する意識調査の結果

国内では、海洋プラスチックごみや漁網リサイクルに関する意識調査も行われています。全国の男女1,000人を対象に実施された調査では、次のような結果が公表されています。

  • 漁網や釣り糸が海洋プラスチックごみの一因であることを知っている人:55.3%
  • 漁網のリサイクル技術の存在を知っている人:24.8%
  • 使用済み漁網のリサイクルを「良い」と感じる人:71.3%
  • 漁網由来の再生素材を使った製品があれば選びたい人:69.5%
  • 漁業者が漁網リサイクルに取り組むことに「良い印象」を持つ人:78.1%
  • その取り組みを「応援したい」と答えた人:92.1%

この結果から、「漁網が海洋ごみの一因である」という認識は半数程度にとどまる一方で、一度具体的な取組内容を知ると、多くの人が「良い取り組み」「応援したい」と感じていることがわかります。

つまり、漁網リサイクルについては、認知はまだ低いものの、理解されたときの支持は非常に高いという構図が見て取れます。

3. 廃漁網が再生素材に生まれ変わる一般的な流れ

日本国内では、使用済み漁網を回収し、再生ナイロンなどの素材として再資源化する事業も展開されています。公開されているプレスリリースなどの情報をもとにすると、廃漁網リサイクルの一般的な流れは次のように整理できます。

  1. 使用済み漁網を各地から回収する
  2. 金属類などの異物を取り除く
  3. 洗浄・破砕などの処理を行う
  4. 再生ナイロンペレットなどの原料へ加工する
  5. オフィス家具、アパレル、文具、建材などの製品に活用される

このように、廃棄物として処分されていた漁網が、加工を経て再び素材として利用される循環の仕組みが実際に動き始めています。

4. 漁網リサイクルが注目される理由

公開されているデータや情報から、漁網リサイクルが注目される理由を、次の3点に絞って整理できます。

4-1. 海洋ごみ・ゴーストギア対策としての効果が期待できる

漁網は強度が高く、海に流出すると長期間残存する可能性があります。ゴーストギアとして漂い続けると、海洋生物が絡まるなどの被害をもたらすことが指摘されています。

使用済み漁網を適切に回収し、リサイクルのルートに乗せることは、こうしたリスクを減らす具体的な対策の一つといえます。

4-2. 市民・消費者からの支持が非常に高い

前述の意識調査では、漁網リサイクルへの賛同や、再生素材を使った製品を選びたいと回答した人の割合が高く、海洋環境や水産業を守る取り組みとして広く受け入れられやすいことがわかります。

環境配慮型の商品づくりや企業の社会的責任(サステナビリティ)の観点からも、漁網リサイクルはわかりやすい取り組みと言えるでしょう。

4-3. 再生素材としての用途が広い

漁網由来の再生ナイロンは、強度や耐久性を活かし、オフィス家具やアパレル、文具など多様な分野で活用されています。こうした実際の用途が具体的に示されている点も、漁網リサイクルへの期待を高める要素になっています。

5. 今後の課題と広がりに向けたポイント

一方で、公開情報から見える課題もあります。

  • 漁網リサイクル技術そのものの認知度が、まだ約4分の1程度にとどまっていること
  • 海岸漂着ごみとしての漁具の割合が高いケースがあり、流出防止や回収の仕組みづくりが引き続き必要なこと

これらを踏まえると、今後のポイントとしては次のような取り組みが挙げられます。

  • 漁具の適正管理や廃棄方法の徹底
  • 使用済み漁網の回収ルートの整備・拡大
  • 漁業者・自治体・企業・市民を巻き込んだ情報発信と認知向上

こうした取り組みが進むことで、海洋ごみ削減と資源の有効活用の両面で、漁網リサイクルがより大きな役割を果たしていくことが期待されます。

まとめ

海洋プラスチック問題の中で、漁具由来のごみ、とりわけ漁網は大きなウエイトを占めることが調査によって示されています。一方で、漁網リサイクルという解決の糸口に対する一般の認知はまだ高くありません。

しかし、実際に調査結果を見ると、漁網リサイクルや再生素材を使った製品に対しては、多くの人が「良い取り組み」「応援したい」と感じており、社会的な支持は非常に大きいことが分かります。

今後、漁具の適正管理やリサイクルの仕組みがより広く整備されていけば、海洋ごみ削減と資源の有効活用の両面で、重要な役割を果たしていくことが期待されます。

参考:11月21日(金)は「世界漁業デー」【海洋プラスチックごみや漁網リサイクルに関する意識調査を1000人に実施】

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