[コラム]日産「GT-R」生産終了の背景と今後の展望|日本を代表するスポーツカーの軌跡
2025.09.09
【2025年最新】日産「GT-R」生産終了の背景と今後の展望|日本を代表するスポーツカーの軌跡
2025年8月26日、日産自動車の「GT-R」が生産終了を迎えました。2007年のデビューから18年、世界のファンを魅了してきた日本を代表するスポーツカーが幕を下ろした背景には、環境・騒音・安全といった規制強化と、少量生産ハイパフォーマンス車の採算性という現実があります。本稿では、GT-Rの歩みと生産終了の理由、そして復活の可能性までをわかりやすく解説します。
GT-R生産終了がもたらす衝撃
栃木工場で完成した最後の1台は「ミッドナイトパープル」。ラインオフの瞬間、報道陣や開発・生産に携わった関係者が見守り、拍手に包まれました。多くの技術者にとって、GT-Rは単なる製品ではなく日産を象徴する存在でした。
R35「GT-R」の誕生と進化
R35は名車「スカイラインGT-R」の後継として2007年に登場。V6ツインターボと先進の四輪駆動がもたらす圧倒的な動力性能で、公道からサーキットまで高い評価を獲得しました。エンジンは9人の熟練工「匠」が一基ずつ手組みし、品質への揺るぎないこだわりを体現。18年間で外観は大きく変わらない一方、見えない部分の改良が積み重ねられました。
規制が生んだ技術革新:静粛性と環境性能の両立
R35の技術進化の背後には、排ガス・燃費・騒音・安全といった規制の強化があります。直近では車外騒音規制(時速50km時の73dB以下)が大きなハードルに。開発陣は航空機ジェットエンジンの知見を応用し、排気流を分散・吸収するマフラー内部構造を導入。静粛性を確保しつつ、アクセルを踏み込んだ際の力強いサウンドを残す工夫が図られました。
また、触媒は低温で性能が落ちるため、エンジン直近に配置して素早く温度を上げる設計を採用。環境性能を損なわず、レスポンスの良い加速感というGT-Rらしさを守り続けました。
価格高騰が示すビジネスの現実
初期モデルの価格は777万円(税込)、最終モデルは1444万円(税込)。性能向上に加え、規制対応のための開発コストが価格へ転嫁され、18年で約1.8倍に。国内のスポーツカー市場規模は乗用車全体に比べ小さく、高性能・少量生産ゆえに投資回収が難しいという構造的課題が生産終了の判断に影響しました。
「GT-Rは戻ってくるのか」— 復活の可能性
日産の経営陣は、R35が残した足跡を強調しつつ「これは永遠の別れではない」とメッセージ。電動化が進む自動車産業において、電動パワートレイン×GT-Rの遺伝子という新たな形での再登場に期待が集まります。復活の時期・方式は未定ながら、「名を名乗るに足る」次世代モデルの登場が注目ポイントです。
まとめ:情熱と規制、技術と採算の交差点
GTRの生産終了は、情熱(走り)と規制(社会的要請)、技術革新と採算性という二つの軸が交差する、現代のものづくりの縮図です。R35が築いた技術・ノウハウはすでに日産の量産車へ展開されており、次世代GT-Rがどのように「らしさ」を継承し、時代の要請に応えるか—今後も目が離せません。