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[コラム]ウニ丼が1杯1万8千円?海水温上昇が招く日本の食卓と物価への衝撃

2025.08.26

はじめに

日本では食品価格の上昇が家計を直撃しています。背景には円安による輸入コスト増加だけでなく、 気候変動による水産資源の減少が深刻な要因として浮上しています。 特に北海道・利尻島で名産の「バフンウニ」は、海水温の上昇により漁獲量が激減し、 ウニ丼1杯が1万5,000〜1万8,000円(約100〜120ドル)と過去最高値に達しています。

 

海水温上昇とウニ価格の急騰

利尻島の漁協によると、2025年のウニ漁獲量は前年の半分以下に落ち込みました。 その結果、10kgあたりの取引価格は9万円と、2年前の約4万円から倍以上に跳ね上がっています。

日本近海の海水温は近年、平年よりおよそ5℃高い状態が観測されており、 冷水を好むウニにとって過酷な環境になっています。40年以上の経験を持つ漁業者は 「漁獲減と価格高騰の原因は海水温上昇にある」と指摘しており、地域経済への影響も拡大しています。

観光客も打撃を受けており、利尻島では「高すぎて1つのウニ丼を数人で分け、他はラーメンを頼む」 という光景が珍しくなくなっています。

 

魚介類全体に及ぶ影響

影響はウニだけにとどまりません。冷水を好むサケ、サンマ、イカなどの漁獲量は 過去20年で急減し、1kgあたりの市場価格は約5倍に上昇しています。

東北地方はかつてサケの主要な産地でしたが、暖流の北上によって漁獲が大幅に減少。 日本の水産業は、これまで経験したことのない変化に直面しています。

 

食費負担の増大と家計への影響

総務省の統計によれば、2025年7月の食品価格は前年同月比7.6%上昇しました。 特に生鮮食品の価格上昇は顕著で、家計支出に占める食費の割合は約30%と、43年ぶりの高水準に達しています。

これは「食品価格そのものが43年ぶり」という意味ではなく、 「家計に占める比率」が過去最高水準に戻ったということです。 賃金が物価上昇に追いつかない現状では、特に固定収入の高齢者世帯に深刻な影響を及ぼしています。

 

気候変動と金融政策のリスク

日銀もこうした状況を注視しています。生鮮食品の価格上昇は他の物価よりも速いペースで進んでおり、 日銀理事は「気候変動による不安定な天候が食品価格に影響している」と警鐘を鳴らしています。

気候変動がもたらす物価上昇は、従来の「一時的な要因」ではなく、 構造的なリスクとして日本経済に影響を与えつつあるのです。

食料自給率と将来への課題

日本政府は、2030年度までに食料自給率(生産額ベース)を約60%から69%へ引き上げる目標を掲げています。 しかし、海水温上昇による漁獲量減少は、この達成を困難にする可能性があります。

研究者は「今後、温室効果ガスを削減しても2100年までに1〜1.5℃は気温が上昇する」と指摘。 その上で「産卵期の漁獲制限や、増加傾向にあるイワシを積極的に食べる工夫」が必要だと提案しています。

 

まとめ

  • 利尻島のウニ丼は1杯1万8,000円に高騰
  • 漁獲量は前年の半分以下に減少
  • 日本近海の海水温は平年より約5℃高い状態
  • 家計に占める食費割合は43年ぶりの高水準
  • 気候変動は日本経済の物価リスクとして拡大

出展:Urchin rice bowls for $120? How warming seas worsen Japan’s price shock

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