[コラム]環境省が「気候変動の科学的知見」特設サイトを公開
2025.06.26
環境省が「気候変動の科学的知見」特設サイトを公開
はじめに
2025年6月20日、環境省は公式サイトに「気候変動の科学的知見」という特設ページを公開しました。温暖化を否定する主張やフェイクニュースが広がり、気候対策が滞りがちな今、政府が科学的根拠をまとめて発信するのは国内で初めての試みです。
なぜ今、誤情報対策なのか
昨年後半からSNSでは「温暖化は自然現象だ」「CO2は無害だ」といった投稿が急増しました。朝日新聞の調べでは、こうした誤情報が原因で脱炭素投資を延期した企業もあるとのことです。話題性だけを狙うサイトや自動投稿のボットが増え、IPCCなど信頼できる専門情報が一般の読者に届きにくい状況が問題視されています。
誤情報が及ぼす社会的コスト
誤った気候情報は政策の遅れだけでなく、災害リスクの軽視にもつながります。たとえば2024年の豪雨シーズンには「温暖化と豪雨は関係ない」という投稿が広まるということがありました。産業革命前と比べて極端な気象は約2倍に増えており、誤情報による問題の軽視は今後の環境悪化に繋がります。
特設サイト3つの柱
- ファクトチェック
温暖化懐疑論でよく語られる10の誤解を、IPCC AR6の図表と論文リンク付きで解説。 - 国内影響の把握
気象庁や国立環境研究所のデータを利用し、日本の平均気温・豪雨・海面上昇の変化を図で紹介。 - 政策と行動のガイド
企業・自治体向けの脱炭素策と、家庭ですぐ取り組める省エネ行動を掲載。
企業・自治体・教育現場での活用メリット
企業
TCFD開示やESGレポートに必要な一次データを簡単に取得でき、社内の誤情報対策ガイドラインを作る際の根拠資料として活用できます。
自治体
地域の適応計画や条例づくりに役立つローカルな気候影響データが揃っており、説得力のある施策立案が可能です。
教育機関
探究学習の教材として生徒がデータリテラシーを学べ、科学的思考とメディアリテラシーを同時に育むことができます。
関連法制度と国際動向
2024年に改正された地球温暖化対策推進法では、企業の温室効果ガス排出量をより透明に開示する新基準が導入されました。EUでもデジタルサービス法(DSA)が誤情報対策を強化しており、日本の今回の取り組みも海外メディアから注目されています。
誤情報を見抜く 3 つのポイント
- 情報源の透明性:政府・研究機関なのか匿名個人なのかを確かめる
- 査読済みデータの有無:IPCCなど一次データに基づいているかチェックする
- データの切り取り方:都合の良い期間や地域だけを抜き出していないか検証する
まとめ
環境省の特設サイトは「確かなデータを行動に活かす拠点」です。
企業のESG戦略から日々のライフスタイルまで、誤情報に惑わされず脱炭素社会へ踏み出すには、信頼できる一次情報を共有する習慣が欠かせません。
参考・出典
- 環境省「気候変動の科学的知見」特設ページ
- 朝日新聞(2025年6月20日)「『温暖化は人為的でない』増える誤情報」
- IPCC 第6次評価報告書 日本語特設ページ
- 気象庁『日本の気候変動 2025 ―概要版―』
- 気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)
- 環境省「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度」