[ニュース]プラスチックごみ問題の国際条約、早期実現への課題と展望
2024.12.24
プラスチックごみ問題の国際条約、早期実現への課題と展望~地球規模の海洋汚染対策を目指して~
プラスチックごみ汚染の深刻化と国際社会の取り組み
プラスチック製品の大量生産と消費は、利便性の代償として深刻な環境問題を生み出しています。自然分解されにくいプラスチックごみ(以下、プラごみ)は、世界中で海洋汚染や生態系への悪影響を引き起こしています。この危機感から国連は2022年、プラごみ汚染を防止する国際条約の策定に着手しました。
2024年11月、韓国・釜山で開催された政府間交渉委員会(INC)の第5回会合では、170カ国以上が参加。しかし、条約の主要議題であるプラスチック生産規制を巡る各国の対立により、合意には至りませんでした。
条約策定の進捗と今後の課題
これまでに行われた4回の会合では、条約案の基本骨格が固まりました。生産から廃棄までのライフサイクル全体を通じた規制案や、国別行動計画の策定、資金面の支援体制などが議論されてきました。しかし、最大の争点である「プラスチック生産規制」を巡り、欧州連合(EU)や島嶼国と、石油産出国との間で意見の隔たりが埋まりませんでした。
交渉の終盤には妥協案も提示されましたが、合意には至らず、2025年の早期交渉再開が期待されています。
世界のプラごみ問題:データで見る現状
プラスチックの生産量の推移
1970年代から急増したプラスチック生産量は、2019年には年間4億6000万トンに達しました。OECDの報告によると、2040年には7億トンを超えると予測されています。
リサイクル率の低迷
現在、世界全体のプラごみのリサイクル率はわずか9%。埋め立てが50%、焼却が19%、環境中への流出が22%を占めています。
海洋への影響
年間約800万トンのプラごみが海洋に流出。マイクロプラスチックとして海洋生物や人間の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。
条約実現の鍵:循環型経済への転換
プラスチック汚染を減らすためには、「使い捨て」の経済モデルから「再利用」を基盤とした循環型経済への移行が求められます。国連環境計画(UNEP)の報告書では、過剰包装の削減や代替素材の活用、リサイクル技術の強化が提案されています。
2040年までにリサイクル率を40%台に引き上げることで、環境へのプラスチック流出を96%削減できるとの試算もあります。
日本の役割と今後の展望
日本はこれまで、G20大阪サミットで「2050年までに海洋プラスチックごみゼロ」を掲げるなど、国際社会のリーダーシップを発揮してきました。条約策定においても、技術開発や資金面での貢献が期待されています。
まとめ
プラごみ問題の解決は地球規模の課題であり、国際社会が協調して取り組む必要があります。条約の早期実現に向けて、各国の合意形成が進むことを期待します。
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