[ニュース]プラスチック汚染防止へ国際条約交渉が開始:初の国際合意に向けた動き
2024.11.26
プラスチック汚染防止へ国際条約交渉が開始:初の国際合意に向けた動き
2024年11月25日、韓国・釜山で、プラスチックによる環境汚染を防止する初の法的拘束力のある国際条約の交渉がスタートしました。
この条約は、プラスチック汚染による生態系や人間の健康への悪影響を軽減するため、各国が協力して具体的な取り組みを進めることを目指しています。
国内外で懸念されるプラスチック汚染の現状
日本国内での初の研究成果:微細プラスチックの人体への影響
東京農工大学の高田秀重教授の研究グループは、国内で初めて微細プラスチックが人間の血液から検出されたことを報告しました。検出されたのは、食品容器などで広く使用される「ポリスチレン」。調査対象となった11人のうち4人の血液から、1000分の1ミリ以下の微細なプラスチックが確認されました。
高田教授は、微細プラスチックが海洋生物や大気中を経由して人体に取り込まれる可能性を指摘し、「プラスチックに含まれる有害物質が人体や生態系に深刻な影響を及ぼす可能性がある」と警鐘を鳴らしています。また、プラスチックの使用量削減と生産量全体の見直しを強調しています。
世界的なプラスチック汚染の実態
OECDによると、2019年に世界で発生したプラスチックごみは約3億5300万トン。そのうち9%しかリサイクルされず、20%以上が不適切に処理されました。結果として、約2200万トンが海や陸地に流出していると報告されています。
特に、プラスチックごみの輸入が増加しているマレーシアでは、違法な投棄や焼却による健康被害が発生しています。現地のNGOは「輸入されたごみの多くがヨーロッパから来ている」と指摘し、不適切な処理が環境や住民に深刻な影響を与えていると訴えています。
国際交渉の焦点:生産量規制と流出防止策
国際条約の草案には、プラスチックの生産量規制や流出防止策の義務化が含まれています。
- EUやアフリカ諸国:一律の生産量規制を主張。
- 中国やインド、産油国:規制に慎重な姿勢。
- 日本:各国の事情に合わせた目標設定とリサイクル推進を提案。
これらの意見の隔たりが、交渉の難航を予想させます。バジャス議長は環境中への流出防止策を重視しつつも、各国の合意を得るため具体的な生産規制の言及を避けた草案を提示しました。しかし、産油国などが条約の対象範囲に異議を唱えたため、交渉の進行が遅れています。
まとめ:持続可能な未来への道筋
今回の政府間交渉委員会は、2021年の国連環境総会で決議された国際条約の具体化に向けた重要なステップです。12月1日まで行われる交渉では、以下の項目について議論が続けられます。
- 発がん性が懸念される化学物質の規制。
- リサイクルや処分のための国際基準。
- 環境中への流出防止策の義務化。
日本は、地理的な特性からプラスチックごみの「被害者」と「加害者」の両方の立場にあるとされています。このような立場を踏まえ、国内外での責任ある行動が求められます。
プラスチック汚染問題の解決は、生態系や次世代の健康を守る鍵となります。今回の交渉が持続可能な未来への第一歩となることが期待されています。